「薬が多い」と感じたら考えてほしいこと
〜ポリファーマシーと処方カスケード〜
病院や薬局でもらう薬がどんどん増えていく――。
そんな経験はありませんか?
高血圧、糖尿病、コレステロール、痛み止め、胃薬、睡眠薬…。
気づけば毎日10種類以上の薬を飲んでいる方も少なくありません。
このように複数の薬を同時に使っている状態を、医療では「ポリファーマシー(polypharmacy)」と呼びます。
💊 ポリファーマシーとは?
ポリファーマシー自体が悪いわけではありません。
病気が複数ある高齢者では、必要な薬が増えることは当然あります。
しかし、問題は「本当にすべての薬が今も必要かどうか」が見直されないまま、漫然と処方が続くことです。
薬が増えすぎると――
・飲み忘れや飲み間違いが増える
・薬同士の“相互作用”で副作用が出やすくなる
・ふらつき・転倒・便秘・倦怠感・食欲不振などが悪化する
といったリスクが高まります。
🔁 処方カスケードとは?
ポリファーマシーの中で特に注意すべきなのが「処方カスケード(prescribing cascade)」です。
これは、ある薬の副作用を“新しい病気”と勘違いして、さらに別の薬を追加してしまうことを指します。
例:
1. 血圧の薬でむくみが出る
2. 「むくみを治すために」と利尿剤を追加
3. その利尿剤で脱水や腎機能低下が起こる
4. さらに別の薬を追加……
このように、「薬の副作用 → 新しい薬 → さらに副作用」と連鎖的に薬が増えていくのが処方カスケードです。
👨⚕️ 医療者としてできること
・定期的に薬の内容を確認すること(減薬の検討)
・症状が新しく出たときに、まず副作用を疑う視点を持つ
・患者さん自身にも、「薬を飲み始めてから何か変化があったか」を聞く
また、医師・薬剤師・看護師が連携して処方全体を確認することで、
「本当に必要な薬だけを残す」方向へ見直していくことが大切です。
🧠 患者さんへ
薬は、多ければ多いほど良いわけではありません。
むしろ、減らせる薬を見つけることが、健康寿命を延ばす第一歩です。
「同じような薬が重なっていないか」
「もう症状が落ち着いているのに続けていないか」
「飲み合わせは大丈夫か」
気になることがあれば、ぜひ遠慮なく主治医や薬剤師に相談してください。
薬を減らすことも、立派な医療です。
💬 まとめ
ポリファーマシーとは、薬が多くなること。
処方カスケードとは、副作用を“別の病気”と勘違いして薬が増えること。
薬の数を減らすことは「治療の失敗」ではなく、「安全で丁寧な医療」への一歩です。
田中整形外科医院 院長 田中 秀
