歳とるとなりやすい病気、性別差
老化による男性と女性でなりやすい病気は違い、ホルモンの変化、代謝、体の構造の違いによって生じます。
1. 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)
☑︎男性:リスクが高く、発症が早い
・男性は40代から高血圧や脂質異常症を発症しやすい
・動脈硬化の進行が早い → 心筋梗塞・脳卒中のリスクが高い
・メタボリックシンドロームになりやすい(内臓脂肪型肥満)
☑︎女性:閉経後に急増
・閉経によりエストロゲン(女性ホルモン)が減少すると、動脈硬化が進みやすくなる
・50代以降に脂質異常症や高血圧が増加
・心筋梗塞よりも脳卒中になりやすい(血管が細く、血圧変動の影響を受けやすい)
⭐︎結論:男性は30代から注意、女性は閉経後にリスク上昇
2. 心血管疾患
☑︎男性:心筋梗塞が多い
・動脈硬化が進行しやすく、冠動脈が詰まりやすい
・過食、ストレス、喫煙・飲酒習慣が影響
☑︎女性:脳卒中が多い
・エストロゲンの減少により血管の柔軟性が低下し、脳出血や脳梗塞が増える
・高血圧が影響しやすい
⭐︎結論:男性は心筋梗塞、女性は脳卒中に注意
3. 骨・関節疾患
☑︎男性:骨粗鬆症になりにくいが、なったら重症化しやすい
・テストステロン(男性ホルモン)があるため、骨密度の低下が緩やか
・ただし、一度骨折すると回復が遅い(特に大腿骨頸部骨折は要介護の原因に)
☑︎女性:閉経後に骨粗鬆症が急増
・エストロゲンが骨を守る働きをしているため、閉経後に急激に骨密度が低下
・大腿骨骨折・脊椎圧迫骨折が多い
⭐︎結論:女性のほうが骨粗鬆症のリスクが高いが、男性も無視できない(発見が遅れがち)
4. 泌尿器系・生殖器の病気
☑︎男性:前立腺の病気(前立腺肥大・前立腺がん)が多い
・排尿トラブル(頻尿・尿が出にくい)が増加
・前立腺がんは高齢男性に多い
☑︎女性:尿もれ・膀胱炎が多い
・骨盤底筋の衰えにより、尿失禁(尿もれ)が増える
・女性の尿道は短いため、膀胱炎になりやすい
⭐︎結論:男性は前立腺トラブル、女性は尿失禁や膀胱炎が増える
5. ホルモン関連疾患
☑︎男性:LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群、男性更年期)
・テストステロンの低下により、筋力低下・抑うつ・やる気低下が起こる
・サルコペニア(筋肉減少)も進みやすい
☑︎女性:更年期障害(エストロゲン減少の影響)
・のぼせ・ほてり・イライラ・不眠などの症状が強く出やすい
・閉経後、急激に代謝が低下するため太りやすくなる
⭐︎結論:男性はテストステロン低下、女性は更年期障害に注意
6. がん
☑︎男性:前立腺がん・肺がん・大腸がんが多い
・前立腺がんは高齢男性に多い(進行が遅いが注意)
・喫煙者が多いため、肺がんのリスクも高い
☑︎女性:乳がん・子宮がん・大腸がんが多い
・乳がん・子宮がんはホルモンの影響を受けやすい
・大腸がんは男女ともに高齢になるとリスクが上がる
⭐︎結論:男性は前立腺がん、女性は乳がんに注意
7. 神経・脳の病気(認知症・パーキンソン病)
☑︎男性:脳血管性認知症が比較的多い
・高血圧・糖尿病の影響で、脳梗塞を起こしやすい
・パーキンソン病の発症率も比較的高い
☑︎女性:アルツハイマー病が多い
・エストロゲンの低下が脳に影響し、認知症リスクが増加
⭐︎結論:男性は脳血管性認知症、女性はアルツハイマー型認知症が多い
8. 免疫低下・感染症
☑︎男性:肺炎やインフルエンザの重症化リスクが高い
・喫煙率が高い影響で肺の機能が低下し、肺炎になりやすい
・男性ホルモン(テストステロン)は免疫をやや抑制する作用があるため、感染症に弱い
☑︎女性:帯状疱疹や膀胱炎が多い
・加齢による免疫低下で帯状疱疹が増える
・尿路感染症(膀胱炎)が起こりやすい
⭐︎結論:男性は肺炎リスク、女性は帯状疱疹・膀胱炎に注意
まとめ
男性は生活習慣病が早くから進行し、心筋梗塞や脳血管性認知症のリスクが高いのが特徴です。また、前立腺肥大や前立腺がんが増え、肺炎が重症化しやすい傾向があります。
一方、女性は閉経後にエストロゲンが低下し、骨粗鬆症や脳卒中、アルツハイマー型認知症のリスクが上昇します。また、尿もれや膀胱炎、帯状疱疹が増えやすいのも特徴です。
田中整形外科医院 院長 田中 秀